投稿日 : 2024年6月18日(火曜日)

こんにちは、大阪のプリントおじさん「ブー」です。私はプリントTシャツを作る仕事をしています。私の主な技術はシルクスクリーンプリントです。生地に直接インクを刷るため、その風合いが非常にかっこいいのが特徴です。今回は、シルクスクリーンプリントについて詳しくご紹介します。

シルクスクリーンプリントとは?

シルクスクリーンプリントは、インクを網目状のスクリーンを通して生地に印刷するTシャツ作成の技法の一つです。この技術は非常に古く、元々はシルク(絹)を使ったスクリーンが使用されていました。現在ではナイロンやポリエステル製のスクリーンが主流ですが、その歴史から「シルクスクリーン」と呼ばれ続けています。

製版の仕組み

シルクスクリーンプリントの要は「版」を作ることにあります。以下はその工程です:

斜張り

斜張りは、スクリーン(メッシュ)をフレームに張りつける工程です。この工程はスクリーンの張り具合が印刷の精度に大きく影響するため非常に重要です。

  • フレームの準備: アルミや木製のフレームを使用します。フレームは強度があり、スクリーンをしっかりと支えられるものを選びます。
  • メッシュの取り付け: スクリーンメッシュをフレームに張り付けます。スクリーンはナイロンやポリエステル製のものが一般的です。スクリーンをフレームの端にしっかりと固定し、均一に張り付けます。
  • テンションの調整: スクリーンを均一にピンと張るためにテンションを調整します。均一に張ることで、インクがスムーズに通り、きれいにプリントできます。

感光乳剤の塗布

感光乳剤の塗布は、デザインをスクリーンに転写するための下準備です。

  • 感光乳剤の選定: 使用する感光乳剤は、露光時に硬化するタイプのものを選びます。水性や溶剤性など、使用するインクに合わせて選ぶことが重要です。
  • 塗布: 感光乳剤をスクリーンに均一に塗布します。専用のコーターを使用して、薄く均一に塗り広げます。この際、気泡やムラができないように注意します。
  • 乾燥: 感光乳剤を塗布したスクリーンを暗所で乾燥させます。直射日光を避け、乾燥機を使って乾かすことが多いです。

デザインの準備

デザインの準備は、プリントしたいデザインをスクリーンに転写するための工程です。

  • デジタルデザイン: パソコンでデザインを作成します。デザインは高解像度で、スクリーン印刷に適したフォーマット(例えば、ベクターデータ)で準備します。
  • フィルム出力: デザインを透明なフィルムに出力します。このフィルムはデザインの部分が黒く印刷され、光を通さない部分を作ります。

フィルム焼き

フィルム焼きは、デザインがスクリーンに転写される重要な工程です。

  • フィルムのセット: スクリーンの感光乳剤が乾燥したら、デザインフィルムをスクリーンに重ねます。フィルムの位置を正確に調整します。
  • 真空装置の使用: フィルムとスクリーンを密着させるために真空装置を使用することが一般的です。これにより、フィルムとスクリーンの間に空気が入らず、くっきりとした転写が可能になります。

露光

露光は、デザインをスクリーンに焼き付ける工程です。

  • 露光機の使用: 露光機にセットしたスクリーンを、強力な紫外線ランプで照射します。感光乳剤が光に反応し、硬化します。
  • 露光時間: 露光時間は乳剤の種類やデザインの複雑さによって異なりますが、通常数秒から数分です。適切な露光時間を選ぶことで、デザインの精度が高まります。

洗い

洗いは、露光後のスクリーンを水で洗浄し、デザイン部分を浮き出させる工程です。

  • 水洗い: 露光後、スクリーンを水で洗います。硬化しなかった感光乳剤が溶け出し、デザイン部分が網目状に現れます。
  • 乾燥: 洗浄後、スクリーンを再び乾燥させます。この工程でスクリーンが完全に乾燥することが重要です。

    余談ですが、シルクスクリーンプリントの名前の由来は、このスクリーンが元々シルクで作られていたことに由来しています。シルクは非常に細かい繊維であり、インクの通りが良かったため、印刷に適していました。

    さらに、シルクスクリーンプリントは非常に多用途な技法です。実際に、水や空気以外のほとんどすべての素材にプリントできるのです。紙、プラスチック、金属、ガラス、木材など、多種多様な素材に対応可能です。これは他の印刷技法にはない大きな特徴です。

    プリント工程

    版が完成したら、いよいよプリントの工程です。

    説明します。

    版の位置調整

    版の位置調整は、デザインが正確に印刷されるための重要なステップです。

    • プリント台の準備: プリント台(プラテン)は、Tシャツを固定するための平らな台です。プリント台の位置がずれないようにしっかりと固定します。
    • 版の設置: スクリーンをプリント台にセットし、スクリーンのフレームをホルダーに固定します。ホルダーは通常、版の高さや角度を微調整できるように設計されています。
    • 位置決め用マーク: プリント台に位置決め用のマークを設置し、スクリーンのデザイン部分が正しい位置に来るように調整します。位置決め用マークは、透明フィルムや紙を使って作成し、台に貼り付けることが多いです。

    プリントの位置調整

    プリントの位置調整は、デザインがTシャツの正確な位置に印刷されるためのステップです。

    • テストプリント: まず、テストプリントを行います。紙や古いTシャツを使ってデザインを試し刷りし、位置や色の確認を行います。
    • 微調整: テストプリントの結果を確認し、必要に応じてスクリーンやTシャツの位置を微調整します。この工程を繰り返し、デザインが正しい位置に来るまで調整します。

    Tシャツの製品台への設置

    Tシャツをプリント台に正しく設置することも重要です。

    • Tシャツの準備: Tシャツを平らに広げ、シワがないように整えます。シワがあるとプリントが不均一になるため、慎重に確認します。
    • 固定: Tシャツをプリント台に固定します。多くのプリント台には、Tシャツがずれないようにするための粘着シートが付いています。これにより、Tシャツがしっかりと固定され、正確な位置にプリントできます。

    プリント開始

    プリント開始は、実際にインクをスクリーンを通してTシャツに転写する工程です。

    • インクの準備: 使用するインクをスクリーンの上部に均一に乗せます。インクの種類や色を確認し、適切な量を準備します。
    • スキージの使用: スキージ(ゴムヘラ)を使って、インクをスクリーンの上から下へ均一に引き伸ばします。スキージは一定の圧力をかけて動かし、インクがスクリーンのデザイン部分を通ってTシャツに転写されるようにします。
    • 複数回のプリント: 必要に応じて、同じ場所に複数回プリントすることもあります。特に濃い色や細かいデザインの場合は、インクがしっかりと定着するまで複数回プリントします。

    乾燥

    乾燥は、プリントしたインクを定着させるための工程です。

    • 乾燥機の使用: プリントが終わったTシャツを乾燥機に入れます。乾燥機は通常、一定の温度と時間でインクを完全に乾かすために使用されます。温度と時間はインクの種類により異なりますが、通常は150〜160℃で数分間乾燥させます。
    • 自然乾燥: 一部のインクは自然乾燥でも定着しますが、時間がかかるため、通常は乾燥機を使用することが多いです。
    • 仕上げの乾燥: 乾燥が終わったら、Tシャツを取り出し、最終確認を行います。インクが完全に乾いているか、デザインがしっかりと定着しているかを確認します。

    色数と版

    シルクスクリーンプリントでは、使用する色数の分だけ版が必要です。例えば、3色のデザインなら3つの版を作り、それぞれ別々に印刷します。そのため、多色刷りの場合は手間もコストもかかりますが、非常に鮮やかで立体感のある仕上がりが得られます。

    検品や袋入れなどの仕上げ工程

    プリントが完了したら、次に検品を行います。デザインにズレやインクのムラがないかをチェックし、必要に応じて修正します。検品が終わったら、Tシャツを袋に入れて梱包します。

    プリントTシャツのできあがり

    こうして、シルクスクリーンプリントを施したオリジナルTシャツが完成します。手間はかかりますが、その分だけ品質の高い、満足のいく仕上がりになります。シルクスクリーンプリントの魅力は、何といってもその風合いと耐久性です。是非、一度試してみてください。